日々のルーティンとして、週に一度、近所の整体に通っている。劇的な即効性がある訳では無いが、しばらく行かないと明らかに調子が悪くなる。特に腰と肩がズンと重くなり、椅子に座って仕事をしているだけでも、横になって眠るときもつらい。自分も含め、長時間のPC作業を行う周りのデザイナーが、肩・背中・腰・手首の違和感や痛みについて嘆いてる。他職種の友人たちと比べてもその割合が多いような体感があり、どうしようもなく職業病だと思う。
身体の痛みが強い時には針を打ってもらう。トン、トン、トン、と体に針が入っていく感覚はいまだになんとも言い難く、未体験の人に伝えるための語彙が私にはない。基本的に痛みはなく、わたしの身体に異物が侵入してくるのがわかる。鍼を打ったポイントから広がって全身にじんわりと影響する。とはいえ、「じんわりと影響」と書いてみたものの、実際に鍼が打たれた場所から「じんわり」を感じるわけでもない。しかし、施術後の身体は軽くなるし、次の日からすこし調子が良くなる。
ところで、ソーシャルイノベーションの文脈で、小規模の介入を行うことで全体のシステムに影響を与えることを鍼治療を比喩として表現することがある。Design Harvestsは、地域資源と強みを利用した都市と農村の持続可能な相互作用の構築、ひいては中国の持続可能な発展のために、イノベーションのハブとなるネットワークを地域社会と共に設立するためのプロジェクトだ。
鍼でツボを刺激することで、血液の流れがよくなり、身体全体の調子が良くなる。鍼を打つことそのものは劇的な変化ではなく、レバレッジポイントと呼ぶには遠い小さな変化である。しかしこの小さな変化が、ちょうど体全体の調整を測るように、大きなうねりとなり、最終的にシステムの変化につながる。本取り組みでは、デザイナーがミクロなプロジェクトに介入し、持続可能な方向に向かってシステミックな効果を生み出するこのアプローチを、「鍼を打つようなデザインアプロ―チ」として採用している。対処療法的でもあり、ゆるやかに全体につながっていることがおもしろい。草の根的なボトムアップの施策によって、トップのあり方の変容につながる。
わたし自身の身体システムにおいては、定期的に運動をする、またはそのための仕組みを考え習慣化したほうが、変化を期待できることは頭でわかっているのだが、運動音痴かつ運動が大嫌いな自分にとっては何一つ続いた試しがない。きっとこれもミクロな介入ポイントの一つである。
話はそれてしまったが、先生によると、鍼を打った後に寝ることで身体が回復するらしい。その場で即効的な効果を実感できるわけではなくても、少し寝かせてみることによって血気の循環が促される。もしかすると、自分の仕事においても同様のかたちがあるのかもしれない。
🎥 今週の映画
茶飲友達(2023)
若者たちが運営する高齢向けのデリヘル「茶飲友達(ティー・フレンド)」を題材にした作品。シニアの性問題を描きながら、その根幹には、運営側の若者・デリヘルサービスを受ける高齢者の孤独、社会に渦巻く閉塞感、そして家族関係に対する問いかけを強く感じる。ギャンブル依存、シングルマザーになることへの経済的不安、夢を追うことへの虚しさ、登場人物は居場所をもとめて身を寄せ合うが、全員がおのおの寂しさを抱えている。作品中の利害関係によってつながる擬似家族はうすらやさしい嘘で関係性をつないでいるが、その連帯は脆い。
妻に先立たれた高齢男性が、眠れない夜中にクローゼットを開けて妻の服に顔を埋めるシーン。これからシングルマザーになる女性が、役所で生活保護を求めるシーン。「おじいちゃんには、縁側でひなたぼっこしていてほしい」という台詞。社会的問題に大きく切り込むような映画ではなく、わたしやわたしの周りにありそうな日常の風景として、人間の生活が丁寧に描かれている。
📝 国際科学論文誌「Nature」 誌の関連ジャーナルとして、都市と都市問題に関連する主要な研究と見解を幅広く掲載する「Nature Cities」が発刊。
😢 CHAIが次のツアーを最後に「NEOかわいいをフォーエバー」と、解散発表。
📝 王子ネピアが「AI」によるパッケージデザイン評価システムを活用し、パッケージデザインの大規模リニューアル。
東京は雨の週末でした。雨の日に家の中で本を読んだり、ゴロゴロするのが好きです。今週もみなさまにとってすこやかな日々をお過ごしください。