端的に言うと、子どもを産むこと、そして育てることが漠然と怖い。産まみ(む)めもというプロジェクトや、現在も続けている地域で子どもを育てる代替親族の研究など、ご縁の中でこの数年は産むことや育てることにまつわるプロジェクトに時間を費やしてきた。そんな時間を通じて、5年前よりもずっと「子どもを持つこと」の解像度が上がってきて、自分としても子どもを産みたい気持ちが明確になった。一方で、法人を立ち上げ運営する女性として、子どもを産んで育てながら、法人もどうにかしていくなんて、本当にやっていけるのだろうかと不安で仕方がない。世の中にあるキャリアと出産・子育てのノウハウは会社員に向けたものが大半で女性の個人事業主ないし経営者のサバイブ方法なんてない。まさかここから手探りだなんて独立当時は思っていなかった。経営者には”育休”がない(自主休みはできるが、もちろん育児休業給付金はでない)。
男性の個人事業主・経営者の場合、子育てとキャリアの順番がパートナーの支援によってどうにかなる可能性もあるけれど、女性の場合にキャリアを育てたい、会社をつくり育てたい、自分の活動や名前を売る仕事をしたり、アカデミアで成功したいをどうにかする…などキャリアの目的は人それぞれだが、今の社会においてはいくつかしかパスが無いのでは?というのが、現状の自分の仮説である。もちろん役割が男女逆の場合もありありえるし、これが全てではないとも思う。
かなり若いうちに子どもを産み、ある程度子育てしてからキャリアを築く
何かしらの分野である一定のポジションを築いてから子どもを生む(一時、社会を離れても大丈夫な状態をつくる)
家庭内ケア(子育て・掃除)の外注、実家・義実家支援を手厚く受ける
自分の場合はすでに33歳で(1)は現実的ではない。(2)のキャリアのポジションが築けているかはさていおいて、自分のこれまでの仕事やスキルでもしいま仕事が全部なくなっても何かしらで生きてけけるだろうと少し自信はついてきた。(3)は生まれ次第、としか言いようがないが、実家も義実家も近くはない核家族世帯なのでどうにもできない。家庭の収入がそれほど大きくないので、金銭サービスによる外注も定常的には難しいし、せっかく子育てをするなら苦労はするだろうけど応答したい。今の自分より少し若い人を見てると、(1)と(2)を両立している人もいてうらやましく思うこともあるけれど、きっとそれも大きな選択だっただろう。
社会学者の富永さんが妊娠・出産を「秘匿」をしていたエピソードも染み入る。
"あまり適切な表現ではないかもしれませんが、「ママいじり」されるのが怖かったからですね。例えば「富永さんはお子さんがいるから忙しそうだし、この仕事依頼するのやめようか」みたいな反応があることは懸念しましたね。"
出産を秘匿した富永京子「母をアイデンティティにする違和感」|CHANTO WEB
仕事がすきな女性・キャリアを積みたい女性、個人で仕事をしている女性にとってはクリティカルな問題だ思う。リスクがあると思われること自体に、法人としてのリスクを想像することもある。男性が育児していてもおそらく懸念は女性ほど現実にならない。ただ、この状況をストレート回避するために「わたしママですが、ママも経営者も頑張ります!!!」とマッチョみのある宣言をし続ける方法をとっている方もいるが、これはこれで私自身のスタイルと合わなそうなので結構しんどい。そしてそもそも、仕事をそんなにも重要視しなければいけない、余白がないビジネスのプロトコルや社会のありようが違うよねというのもその通りだと思う。
それでも、なんとかしている先輩方がいる、というのは希望になる。最近は、いくつかのプロジェクトで自分の1つくらい上の世代の女性の経営者・個人事業主の方々とご一緒している。各々の前提条件は異なれど、各自の状況の中でどうにか打開策を編み出し、やりくりしているのを見ていると、自分もどうにかできるかもしれない、どうにかしてでも子どもを育ててみてもいいかもしれないと思える。各々の置かれた条件の中から生み出されたやりくりは、一見特殊性が高くも見えるけれど、コツや気持ちのようなものがあるだろう。案外「どうにかするしかないから」かもしれないが、そういう経緯を知ることで自分の勇気に変えていけたらと。やってもないことを想像しながら不安がっていても仕方がないのもわかっているけれども。
「いろんな方法を駆使すればできなくはない」は、いろいろな方法を駆使しなければできないということ。日本の制度は、女性が会社員であることを前提に作られているものがほとんどで、日常生活でもオルタナティブを選択し続ける必要がある。仕事の行先もハードモードを選んでいるのに、子育てもハードモードなんて…!と思いつつ、人生を限界まで楽しみ尽くすという意味ではおもしろプロジェクトになるポテンシャルは十分ありそうなことに救われる。
今週の本
学習研究を体系化した本。単体でぼんやり知っている学習理論を全体に位置づけて理解することができる。自組織の学習やコミュニティの変容、ワークショップにおける経験学習を考えてく上のヒントに、序章にあるまとめの図だけで読む価値がある。
最近の気になりごと
📮 郵便局の空き家みまもりサービス | 日本郵便
ヤクルト、生協、郵便局あたりの違う文脈と地域を絡めるのが流行ってる。提案自体は昔からあったきがするが実装プロジェクトが増えてきた。
👨「正義」の反対は「別の正義」なのか 「屁理屈」の横行に抗う哲学者:朝日新聞デジタル
「ほほう。ご高説、お聞かせいただきたく候。」が衝撃的で記事の内容が全く頭に入ってこなかった
🧑🤝🧑 ケアマネのシャドウワークを保険外サービスに 財務省が提言 報酬のインセンティブも | ケアマネジメントオンライン
多くの領域で「人材確保が課題」だが、人口が減っていく一方で、全領域の人材確保って無理なのでは…?というところと、全体のバランスが変わらないと難しい
🏫【京大変人講座】「ダメさ」を武器に、創造性の新境地を切り拓く | NewsPicks
結局、「簡単にできます」から創造したい欲求は生まれない気もしている。Canvaをこえてもっとグラフィックデザインを学ぼうと思える人はどれくらいいるんだろうか。
🧸 「クマ被害」増加の原因は「人口減少」と「温暖化」だった。東京農工大などの研究 | Yahoo!ニュース
・人口減少がこういう形で表出化してくることもあるんだな
2ヶ月前に下書きに入れたままの記事をやっと投稿できた達成感があります。